タイの法律、具体的には刑事訴訟法の下では、被害者は、検察官が事件を起訴することなく刑事裁判所に刑事事件を提起することができます。裁判所が事件の調査を行った後、裁判所は、さらなる審理のために事件を受理するか否かを検討し、審理結果に応じて被告を罰するべきかどうかを決定します。労働紛争や株主紛争など、特定の種類の事件に関与する民間当事者は、これを訴追するための共通のチャネルと考えるかもしれません。 タイの刑法は、新しい法律が多くの刑事犯罪をピナイ罰金犯罪に変えたため、最近大きく変化しました。しかし、これは比較的新しい進展であるため、ピナイ罰金を含む告訴が、これらの民間被害者によって刑事事件として裁判所に提出されている事例がまだあります。よって、このことは、裁判所がそのような事件を進めることができるかどうかという問題が生じています。 タイは、より重大でない犯罪からピナイ犯罪にして、刑事罰の特定種類の罰金を非犯罪化するための新たな法的措置として、ピナイ罰金訴訟法B.E. 2565 (2022) (Act on Phinai Fine Proceedings B.E. 2565 (2022) – ACFP) が施行してから、一年間以上経過しました。これにより、ピナイに関連する犯罪者は、保釈提出、旅行制限、懲役、犯罪歴を含むタイ刑法及び刑事訴訟法に基づくすべての刑事手続及び刑罰の適用をを受ける代わりに、罰金のみを支払わなければならなくなりました。 現在進行中のピナイ犯罪の裁判はどうなるのですか? ACFPは、破産法 B.E.2483(1940年)、登録パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ、リミテッド・カンパニー、アソシエーション及びファウンデーションに関する犯罪の決定法B.E.2499 (Determining Offenses Relating to Registered Partnership, Limited Partnership, Limited Company, Association and Foundation Act B.E.2499)、労働関係法B.E.2518 (Labor Relations Act B.E.2518)、消費者保護法 B.E.2522 (Consumer Protection Act B.E. 2522)、株式会社法B.E.2535 (Public Limited Companies Act B.E.2535)及びACFPに列挙されたその他の法律に基づく犯罪を含む、204の法律に基づく犯罪を自動的にピナイ犯罪に変更しました。ACFPが施行されたので、これらの一般的なホワイトカラー犯罪の多くは、もはや犯罪ではなく、ピナイ犯罪となりました。この実際的な影響は、多くの犯罪がもはや犯罪とみなされないことです。 この変更の影響の1つは、裁判所で進行中のこれらの犯罪の裁判が、ピナイ事件の裁判に関する最高裁判所所長規則 B.E. 2565 (2023) (Regulation of the President of the Supreme Court on Trial for Phinai Cases B.E. 2565 (2023))に規定されたガイドラインに該当するピナイ訴訟に変更されることです。 上記規則には、欠席裁判や非同期裁判、書面審理、電子的手続など、ピナイ犯罪を明確に目的としたピナイ事件の手続及び手続ガイドラインが含まれます。また、判決の通知を書面で行い、当事者に判決の審理への出席を求めないことも規定されています。ピナイ事件に対する手続及びガイドラインは、民事事件及び刑事事件の手続よりも、より柔軟で、より便利で、より迅速な手続をもたらします。 刑事訴訟法とは対照的に、上記規則は、ピナイ事件の目的上、「原告」の限定的な定義を有しています。具体的には、上記規則第3条及び同第11条は、原告が「検察官又は政府職員」でなければならないと規定しています。これにより、裁判所に訴状を提出できる適格者の範囲が狭くなります。上記条項は、ピナイの犯罪者がピナイの告発を受け入れること、又はピナイの罰金を支払うことを拒否した場合に、ACFP第23条と整合するように設計されており、その場合、政府職員は、法律に別段の規定がない限り、裁判所に訴状を提出するために、事実と裏付け書類を要約し、最終報告書を検察官に送付しなければなりません。これにより、ピナイ事件の原告は、検察官又は政府職員に絞られ、労働争議、株主紛争、取締役紛争などに関する犯罪のように、犯罪者に対する交渉又は圧力ツールとして、被害者が裁判所に直接事件を提起するケースが実質的に減少します。 しかし、ピナイを告発する者は、ピナイを告発した者が罰金を科されるように、政府職員を通じて主張を補完したり、苦情を提出したりすることができます。ピナイの訴訟は、政府職員と検察官の決定を介して裁判所に提起することもできます。 原告が検察官や政府職員でない場合はどうなりますか? ACFP第23条と上記最高裁判所所長規則第3条および同第11条の影響は、原告が検察官や政府職員でない場合、裁判所は、原告がピナイ犯罪者に対してピナイ訴訟を提起する権限がないという理由で、訴訟を却下する以外の選択肢がないということです。これにより、裁判所は裁判の対象となる事件を受理しないことになります。 それでも、ACFPおよび上記規則は、裁判所そして多くの訴訟代理人が経験したことがない、又は深い知識を持っていない可能性が高い新しい手続法であることを否定することはできません。したがって、現地の専門コンサルタントに、ACFPおよび上記規則に関連する詳細又は更新を特定して説明し、裁判進行中のピナイ事件の戦略を分析することを求めることが推奨されます。 備考:本和文は英文記事を翻訳したものです。原文については、以下のリンクをご参照ください。 Case Dismissed: The Impact of the Phinai Law on Ongoing Criminal Cases