タイの下院議会は2022年9月14日、タイ民商法の改正法案(以下、「改正法案」とする)を承認した。この改正法案は、非公開会社の発起人・株主の人数、株主総会の通知方法、取締役会の開催、合併の形態など、様々な点において変更を加えており、重要な改正といえる。
コーポレートガバナンスの観点からの改正
コーポレート・ガバナンスの観点からの改正点は多々あるが、例えば以下の事項がある。
- 改正法案では、非公開会社の発起人、株主は最低2人としている(現時点においては、非公開会社の発起人、株主は最低3人必要である)。株主総会で決議を行うには、会社の資本金の4分の1以上を代表する2人以上の株主が出席することで足りる。株主の数が1名になった場合は、裁判所により解散させられることがありえる。
- 改正法案では、原則としては、株主総会の招集通知を新聞に掲載する必要がなくなり、株主に郵送することで足りるとしている。但し、無記名式株券を発行している会社においては、株主総会の招集通知を新聞又は電子媒体において告知する必要がある(詳細は、今後発布される省令において規定される)。
- 配当金の分配は、株主総会又は取締役会の決議から1ヶ月以内に完了しなければならない。
合併に関する改正
- 現行の民商法では、会社の「合併」においては、2つの会社が合併して新しい会社を設立し、合併の対象となった旧会社は解散するという「新設合併」しか認められていない。例えば、A社とB社が合併する場合は新会社Cが設立される。A社とB社は消滅し、C社はA社とB社の権利・義務を継承する。
- 改正法案では、企業結合のもう一つの形態として「吸収合併」が追加された。吸収合併においては、吸収された会社は解散し、吸収した会社は存続する。例えば、A社を存続会社、B社を被吸収会社とした場合、合併手続き終了時にB社は解散し、A社は法人格を維持したままB社の資産、負債、権利、義務を自動的に継承することになる。
今後の展開
改正法は国王による承認を経て、官報に公示されてから90日後に発効する。
備考:本和文は英文記事から作成しました。原文については、以下のリンクをご参照ください。 Thailand Prepares to Enact Amended Civil and Commercial Code